上映作品一覧 |
2009年5月29日(金)前夜祭 |
プログラムA 作品上映 18:30〜20:15 |
<故・土本典昭監督ー追悼ー> 『ドキュメント 路上』 1964年/54分/モノクロ/16mm 監督:土本典昭 製作:東洋シネマ 撮影:鈴木達夫 運転手:川崎喜三郎 高度経済成長のまっただ中の’63年の東京。オリンピック開催を翌年に控え、都市整備の工事が急ピッチで進められている。工事だらけの首都の道路事情は最悪で、日々交通戦争が繰り広げられている。そんな混乱の首都を走るタクシーの運転手を主人公に、東京の24時間を記録した土本典昭の監督第2作目。警視庁による交通安全PR映画として活用される予定だったが、見送られ長らく未公開だった作品。 『わが街わが青春ー石川さゆり水俣熱唱ー』 1978年/43分/カラー/16mm 監督:土本典昭 製作:青林舎・東北新社 製作:高木隆太郎、中川真次 演出:土本典昭、 小池征人、西山正啓 撮影:一之瀬正史、大津幸四郎、川上皓市、平坂政一 録音:久保田幸雄 音楽:森拓治 ナレーター:伊藤惣一 水俣病の公式発表から20年、胎児性水俣病の患者たちも20歳を迎えた。「何かデッカイことをやりたい!」一人の青年が石川さゆりショーを考えついた。寝たきりの患者たちに石川さゆりの歌を聴かせたいというのがその理由だった。「若い患者の会」のメンバーは不自由な手でポスターを貼り、チラシを配り、宣伝カーで漁村を回って、切符を売る…。「自分たちにできる仕事を」という願いが思う様に叶えられない中で、一人前の大人であることを証明したいという意気に貫かれた、彼らの二ヶ月間の公演準備活動と当日の様子を記録した。 |
2009年5月30日(土) |
プログラムB 作品上映 10:00〜11:40 |
『飛鳥を造る』 1976年/50分/カラー/16mm(VIDEO上映) 監督:松川八洲雄 撮影:瀬川順一 プロデューサー:宮島春彦 音楽:間宮芳生 録音:甲藤勇 音響デザイン:大野松男 制作進行:眞部猪一 撮影助手:内藤雅行 ナレーション:藤野節子 奈良の斑鳩三塔のひとつ、法輪寺の三重塔が第二次世界大戦中に落雷で焼けた。30年を経て、作家の幸田文、竹島卓一博士、法隆寺の寺大工・西岡常一らの手によって、飛鳥時代の工法で復元・再建しようという挑戦の記録。「といっても単純に建築記録ですませるわけにはゆかなかった。何故なら飛鳥の塔を 今、造る、という事は、かつて存在し今は存在しない塔の幻を創る事に他ならないからだ。従って映画もまた幻を造る人に焦点を置いている。」(松川八洲雄著「ぼくのフィルモグラフィー」より)。 『諸橋轍次と「大漢和辞典」ーゆうゆうたる持続ー』 1995年/44分/カラー/VIDEO 演出:松川八洲雄 企画:紀伊国屋書店 製作:ポルケ 撮影:黒柳満 証明:中山敬一 音楽:井口明夫 助監督:日向寺太郎 ナレーション:庄司永建 日本初、いや世界初の5万語に及ぶ漢字の大辞典を作り上げた諸橋轍次の伝記的ドキュメンタリーであるが、松川監督の手によって単なる伝記映画から、漢字の歴史と魅力、また辞書作りに魅せられた人々が面白く描かれてゆく。永遠に続くかと思われる気の遠くなる様な編纂の作業の末、大事業を通して、文化とは何か、そして人間とは何かを個性的なアプローチで問いかける。 音楽、構成、脚本、リズム、そして大好きな蝶までもが松川ワールドそのもの。 |
プログラムC 作品上映 12:30〜13:50 ゲストトーク 13:50〜14:40 |
『花はどこへいった ベトナム戦争のことを知っていますか』 2007年/71分/カラー/VIDEO 製作:シグロ 製作・監督・撮影・編集:坂田雅子 共同製作:ビル・メガロス、山上徹二郎 音楽:難波正司 撮影協力:フィリップ・ジョーンズ=グリフィス 編集協力:ジャン・ユンカーマン フォト・ジャーナリストだったグレッグ・デイビスが肝臓がんで急死した。妻である坂田雅子は、ベトナム戦争時に浴びた枯葉剤が原因ではないかと示唆され、夫への追憶と枯葉剤への疑問からベトナムへ行くことを決意する。そこで彼女が目にしたのは、戦後30余年を経た今もなお、ダイオキシンを含んだ枯葉剤が、がんや生まれながらの障害を起こさせ、大地を蝕みつづけているという現実だった。 映画は亡き夫の鎮魂にとどまることなく、受難を引き受けたベトナムの人々の家族愛と平和への思いを描き、戦争や枯葉剤被害の実態に静かに迫る、衝撃のドキュメンタリー。 |
ゲストトーク:坂田雅子さん(「花はどこへいった」監督)× 吉岡忍さん(ノンフィクション作家) |
プログラムD 【第2回「松川賞」受賞作品】 作品上映 14:50〜16:50 17:40〜20:10 |
【第2回「松川賞」入賞作品上映】 『波の記憶』 2007年/52分/カラー/VIDEO 監督・制作・撮影・編集:床田和隆 琉球列島南端の石垣島で一人暮らしの新城康弘(あらしろ やすひろ)さんは、今では数少ない木造船の造船技術を持つ職人。映画は、彼の半生と舟に寄せる思いをつづった。監督・制作者は、自宅の北海道苫小牧から2003年より1年間石垣島に居住し、撮影を開始。美しい石垣島を背景に、木造船サバニの造船技術と舟大工の仕事ぶりを、味わい深い言葉に溢れたインタビューを交えて爽やかに描く。 『団旗の下に』 2007年/60分/カラー/VIDEO 製作:藤田修平研究室 監督・撮影:大須賀康之 監督・録音:根来知宏 日本でも有数の規模と伝統を誇る明治大学応援団。その附属中学校は男子校で、同様に応援団がある。その応援団に小学校を卒業して間もない初々しい新入生が入団してきた。滅私奉公の精神を基本とし、厳しい訓練に耐え、絶対的な上下関係に従わされる応援団の部活動を通して、少年はどう変わっていくのか。最後には驚きの展開もあって、応援団という組織を通して、日本の社会や集団が抱える普遍的問題点も見えて来る。今年の選考会を賑わせた話題作! 『面打/men-uchi』 2006年/60分/カラー/VIDEO 監督・撮影・編集:三宅流 整音:種子田郷 出演:新井達矢(面打)ほか 22歳の若手面打、新井達矢が一つの能面を制作し、観世流能楽師・中所宜夫による舞によって、面に命が吹き込まれるまでを追った。ナレーション・インタビュー・言葉による説明を一切排し、一塊の四角い木が削られ、剥がされ、次第に表情を帯びていく様子を見つめ続ける。沈黙の作業空間に、鋭利な刃物が木を刻む音だけが静かに響きわたる。大胆な手法を試みた意欲作。 『住民票を返せ!』 2008年/45分/カラー/VIDEO 製作:「選挙権を返せ!」製作実行委員会 監督・撮影・編集:金稔万 大阪市西成区釜ヶ崎地区で起きた住民票登録を巡る騒動を追いかけた。市政の迷走、行政の怠慢とお粗末な対応、一方で食べていくために、暮らしていくために住民票と選挙権を求めて行政を相手に激しく闘っていく人々の声、面構え、その迫力とみなぎるパワー。運動の中に入り込み、彼らと肌を擦り合せながら捉えた映像が迫って来る力強い作品。日本のある面の縮図が浮かび上がってくる。 『にっぽんの記憶 第二話 盆のはなし』 2008年/29分30秒/カラー/VIDEO/ 製作:テレコムスタッフ ディレクター:平田潤子 プロデューサー:寺島高幸、大伴直子、設楽実 撮影:山崎裕 編集:植垣康子 柳田國男の随筆「清光館哀史」をもとに、岩手県三陸海岸沿いの小さな漁村に伝わる盆の風習を通して、日本人の精神世界を描き出した。柳田の情緒あふれる文体の朗読に、哀愁漂う小さな漁村の風景を重ね合わせ、「南無阿弥陀仏」の思いが全編を覆い、日本人の死生観と北国の生活を幻想的に編み上げた、深い深い作品。 |
2009年5月31日(日) |
プログラムE 作品上映 10:00〜11:40 |
『佐久間ダム(総集編)』 1958年/95分/カラー/35mm(VIDEO上映) 製作:岩波映画製作所 製作:吉野馨治 監督・脚本:高村武次 編集:伊勢長之助 撮影:小村静夫 音楽:芥川也寸志 天竜川中流に建設された佐久間ダムの建設記録。巨大な洪水量、深さ20mを超える砂礫層などの障害をアメリカの大型土木機械を導入することで克服し、ダム工法を革新した画期的な事業とされる。ダムによる電力の増産、産業の発展という戦後の経済復興を象徴するのが佐久間ダムであった。その後の建設記録映画の原型となったこの映画は、日本の記録映画としてはじめてのカラーフィルムの使用、テープレコーダーによる現場音の収録など、映画の技術においても時代を画するものだった。 |
プログラムF 12:40〜14:30 |
【第2回「松川賞」授賞式】 ・ 受賞者 表彰式 ・ 選考委員の講評 ・ 「大賞」「観客賞」発表 ・ シンポジウム(吉岡忍/森達也/池内了/森まゆみ/他。予定) |
プログラムG 作品上映 14:50〜16:00 |
『型染めー江戸小紋と長板中形―』 1958年/30分/カラー/16mm 企画:文化庁 製作:英映画社 製作:服部悌三郎、宮下英一 監督:山添哲 撮影:金山富男 音楽:一柳慧 出演:小宮康孝(江戸小紋)、清水幸太郎(長板中杉)、篠原雄次(道具彫)、増井一平(突彫)、山ノ井武之(藍染) 生地に型紙を置いて模様を染める型染めは、伝統的な染色技術。重要無形文化財(江戸小紋)の保持者(人間国宝)・小宮康孝氏と、同じく(長板中形)の保持者・清水幸太郎氏のそれぞれの製作過程を丹念に記録した。江戸小紋の緻密で丹念な型抜き作業をはじめ、繊細で美しい手仕事の技を、大胆で豪快なメリハリある音楽に乗せて、たっぷりと見せてくれる。職人ものの映画の真髄とを味わえる秀作。 『木工芸―中川清司のわざー』 2008年/33分/カラー/35mm(16mm上映) 企画:文化庁 製作:日経映像 製作・構成・脚本:佐野文男 演出・構成・脚本:有泉寧 撮影:大木大介 ナレーション:窪田等 重要無形文化財「木工芸」保持者の中川清司は、秋田の地中に1000年の時を越えて眠っていた神代杉(じんだいすぎ)を用い、木目が作り出す幾何学的な文様を装飾に活かした「柾目合わせ」の木画箱を作り出す中川の緻密な木画技法のわざを、制作工程に従って忠実に描き出す。長方形や三角形の部材を2千枚も組み合わせて仕上げてゆく気が遠くなるような職人技を、緊張感溢れる映像で表現する。 |
プログラムH 作品上映 16:40〜18:40 ゲストトーク 18:40〜19:30 |
『嗚呼 満蒙開拓団』 2008年/120分/カラー/VIDEO/ 監督:羽田澄子 製作・配給:自由工房 製作:工藤充 撮影:相馬健司 ピアノ:高橋アキ 吹き替えナレーター:喜多道枝 82歳の羽田澄子監督が、旧満州まで自ら足を運んで撮り上げた渾身の作品。監督自身が戦時中の満州に育ち、どうしても満州で起こった悲劇を記録しておきたいという執念と気迫あふれる衝撃の記録。 満州から生き返った人々、或いは残留孤児として中国に残った人々の生の証言は、戦後64年を過ぎた今も私たちの心に真っ直ぐに突き刺さってくる。足手まといになる老人や、幼い妹・弟たちを、肉親が自ら命を断って、或いは置き去りにして逃げ帰った人々の人生を顧みる時、その悔恨の念は想像を絶する。国家によって移民を薦められ、国家によって見捨てられた満蒙開拓団の人々の悲劇の証言は、過去の歴史にとどまらない。いまの時代だからこそ、日本人として必見の映画。 |
ゲストトーク:奥村正雄さん (「嗚呼 満蒙開拓団」コーディネーター/「方正友好交流の会」参与) |
ゲスト予定者 |
・坂田雅子さん(「花はどこへいった」監督) ・羽田澄子さん(「嗚呼 満蒙開拓団」監督) ・ 吉岡忍さん(ノンフィクション作家) ・ 森達也さん(ドキュメンタリー作家) ・ 池内了さん(宇宙物理学者) ・ 森まゆみ さん(作家) ・まつかわゆま さん(シネマアナリスト) ・日向寺太郎さん(映画監督) ・内海穂高さん(映画プロデューサー) ・野村正昭さん(映画評論家) ・清水浩之さん(映画祭コーディネーター) |
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