第14回ゆふいん文化・記録映画祭(2011)
上映作品一覧


 2011年6月24日(金)前夜祭
プログラムA

作品上映
19:00〜20:40

【東北地方大震災 復興支援 企画】

『映像叙事詩 みちのおく 〜岩手より〜』
  2000年/94分
  監督:松川八洲雄
  ナレーション:岸田今日子
科学への信頼が揺らぎ始めた現在、東北の暮らしをみつめ直し日本の未来を考えようと5年がかりで製作された記録映画。エゾ・エミシと呼ばれ、まつろわぬ民の地東北、かつてその“みちのおく”には大いなる自然と人間の共生があった。しかし、西日本に上陸した稲作文化は、その豊かな世界を消した…。
 豊かな自然に育まれ、経てきた岩手の様々な文化・習俗・歴史・遺跡・農民の生活を、詩情溢れる映像と独特の文調で問い掛け、ありうべき日本の姿を提示する、映画作家・松川八洲雄、渾身の傑作。「頑張れ!東日本」応援企画として、8年ぶりのアンコール上映。

 2011年6月25日(土)
プログラムB

作品上映
10:00〜10:45

『原発切抜帖』
  1982年/45分
  監督:土本典昭
  ナレーション:小沢昭一
 1986年に起こったチェルノフ゛イリ原発事故の4年前に作られた記録映画。
原爆被爆体験国から原子力大国へ突き進む日本の戦後史を、新聞記事の早めくりで一息に見直す。映像に出て来るのは、手持ちのスクラップ(切抜)と古い新聞資料。一万数千の記事を洗い出し、4ヶ月で数千枚のコピーに分類構成、その中から選び抜いた200余りの記事を綴った。
 見落とされがちな小さなベタ記事もクローズアップされ束ねられると、そこには日本の原子力大国化への道がはっきり記されている。
 記録映画の巨匠・土本典昭監督が、この映画で原発大国に変貌していった列島日本に一石を投じてから30年、また第4回「ゆふいん文化・記録映画祭」でこの映画を上映してから10年、この間、私たちはこの映画で鳴らされていた警鐘にどう耳を傾け、目を向けて来たのか。
 3.11福島の原発事故が起きた今こそ、見直しておきたい。


プログラムC

作品上映
(C-1)
11:00〜12:50

(C-2)
13:25〜15:30

表彰・シンポジウム
15:30〜16:50
【第4回 松川賞】受賞作品
 プログラム《C-1》

『ばっちゃん引退〜広島・基町 名物保護司 最後の日々〜』
  2011年/43分
  制作:NHK広島放送局
  取材・撮影・ディレクター:伊集院 要

 「基町のばっちゃん」…地域の人が親しみをこめてそう呼ぶ保護司がいる。広島市中区基町地区で、30年にわたって保護観察者や子ども達の非行と向き合って来た中本忠子(ちかこ)さん(76歳)だ。
 中本さんは、通常の月2、3回の面会だけでは真の更正は望めないと、彼らがいつでも立ち寄れるように、自宅を解放し、手料理を振る舞い、ときには自宅に彼らを泊めたりする。子どもたちにとってばっちゃんの家は、困ったとき、お腹がすいたとき、迷った時の駆け込み寺になっている。そこで中本さんは彼らの声に耳を傾け、家族の様につきあってきた。  そんな中本さんが、昨年11月、保護司としての定年を迎えた。しかし、問題を抱える若者たちは今も中本さんの家に密かに通っている。
 「更正には地域の力が必要」が口癖の中本さんは、いま自分がこれまで担って来た役割を地域に受け継いでもらおうと奮闘している。
 中本さんの子ども達と向き合う姿勢、その接し方、そしてその生き方には、 人と人とのつながりを作ることの暖かさ、強さ、大切さを改めて教えてくれる。

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『原爆投下を阻止せよ〜“ウォール街”エリートたちの暗躍〜』
  2010年/49分
  制作:NHK広島放送局
  制作:松永 真一
  ディレクター:松丸 慶太
  撮影:小嶋一行

 1945年、日本への原爆投下の是非を争い、アメリカ政府内部は二分していた。早期終戦には原爆投下が必要とするトルーマン大統領一派と、非人道平気は使用すべきでないとする一派。しかし、投下反対派の中にはもう一つのグループ、「原爆をめぐる第三の派」が居た。国務次官補ジョセフ・グルーら、米東部出身のエリート集団だ。彼らは保守親日派と呼ばれ、政府高官でありながら、米大企業のビジネスマンでもあり、石油などで莫大な対日投資を行なっていた。
 彼らは人道的立場からではなく、原爆投下は日本への投下資本を破壊し、経済政策上大きな損失になると、あくまで「アメリカの国益=ビジネス」の立場で反対したのだ。彼らは、自らのビジネス利益を守るため、原爆投下する前に日本を降伏させようと、ワシントンやスイスを舞台に政府の内幕で極秘裏に暗躍する
 米保守親日派の対日ビジネスの足跡を記した新発見の資料から、原爆投下をめぐる攻防を新たな側面から検証。まるでサスペンスドラマのような政治劇が繰り広げられる様子を、関係者への取材や丁寧な資料分析から描き出し、日米関係の原点を探る。


【第4回 松川賞】受賞作品 プログラム《C-2》

『Cuba Sentimental』
  2010年/60分
  撮影・制作:田沼 幸子

 大学院の研究のため、1999年〜2004年の間ののべ2年間、ハバナに滞在した作者が、現地で出会った若者達との交流を描く。キューバで暮らす彼らは、チャンスさえあれば国を出るのが夢だった。 「あの国にひとりで残るのがイヤだった。いつも誰か出国していなくなる。年に2人か3人は友達や知り合いがいなくなる」そう言って、友人達が次々と国外に出て行く。そんな彼らを、カメラは世界中を追いかけて回る。イギリス、スペイン、チリ、アメリカ…祖国キューバを出た彼らは、どこでどんな生活を、どんな思いで送っているのか。そして一方、本国に残った人達は、そういう彼らの事をどう考えているのか、そして彼らの友情と祖国への思いは…

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『むかし むかし この島で』
  2005年/48分
  制作:沖縄テレビ
  構成・演出:山里 孫存
  語り:平良 とみ

 沖縄を襲った、あの激しい戦争から60年。長い年月が経過した今、この島にあの沖縄戦を記録したフィルム映像が届いている。アメリカ軍は沖縄で行なわれた戦争を詳細に記録していたのだ。その沖縄戦記録フィルムには、これまで世に出て来なかった、多くの「物語」が封印されていた。
 その数千本にものぼるといわれる沖縄戦記録フィルムの検証を続けている、作家・上原正稔さん(62歳)。上原さんは、独自のルートでアメリカで眠っている「沖縄戦映像」を取り寄せ、それを生き残った人々やその関係者、地区の人達に見せる活動を続けて来た。
 「大切なことは、沖縄戦を撮影したフィルムに、無数の沖縄住民の姿が映っているということだ。ボクは、フィルムの中の「主人公」たちに、この映像を届けたい…。」そう言う上原さんの思いに共感した番組スタッフが、一緒に沖縄戦フィルムに関する調査を開始する。
 一年半にわたり沖縄各地で開いた上映会とそこで得られた証言、60年ぶりに見る自分の姿、フィルムを通して懐かしい家族と再開した人々は、堰を切った様に長い間旨の中に封じ込めて来た思いを語り始める。そして封印されていた物語が解き放たれた時、そこに映っていたものとは…。
 沖縄戦時の米軍フィルムをいま見る事の意味、映像の力を再確認する感動作品。


「第4回 松川賞」シンポジウム
 ゲストコメンテーター:池内 了さん(宇宙物理学者)、森まゆみさん(作家)、
            藤原 新也さん(写真家・作家)、姜信子さん(作家)  ※予定
プログラムD

作品上映
17:30〜19:20

ゲストトーク
19:20〜20:20

『Canta! Timor カンタ!ティモール』
  2010年/110分
  監督:広田 奈津子
青い海、たわわに実るマンゴー、
息をのむような美しい自然と人々の笑顔があふれる、常夏の島 ティモール。
太陽に愛された明るさの一方で、日本も関わった軍事攻撃の傷が影を落とす。

21世紀最初の独立国、東ティモール。
その独立を勝ち取るまでに、島民たちは想像を絶する苦悩と悲しみを強いられる。
3人に一人が命を落としながらも、人々が選んだのは、許すこと、笑うこと。

素朴で美しい音楽にのせて、大地と深く結びついた人々の優しさと、
深いメッセージが胸に残る、感動の音楽ドキュメンタリー。

小さな島での出来事から、私たちの世界が見えて来る。

ゲストトーク:広田 奈津子 監督
 2011年6月26日(日)
プログラムE

作品上映
10:00〜11:20

ゲストトーク
11:20〜11:50

『死んどるヒマはない 〜益永スミコ86歳』
  2010年/70分
  企画・制作:ビデオプレス
  出演:益永スミコ
「益永スミコさんは、1923年大分で生まれた。教育勅語で育ち「軍国少女」だった彼女は、助産婦として病院に勤務していた当時、多くの兵士を戦地に送りだした。
戦後、本当の歴史を学び、「二度と戦争をしない」を基本に平和な社会、人間が人間らしく生きられる社会を目指す。その後、47歳で労働組合を作り、アムネスティの活動から「死刑囚の母」にもなる。
人権擁護、死刑廃止、憲法9条を守る運動などに献身的にかかわる益永さんは、86歳の今もひとりで街頭に立ち人々に呼びかけている。

ゲストトーク:益永 スミコさん
プログラムF

作品上映
12:20〜14:00

ゲストトーク
14:00〜14:50

<2本だて上映>

『朝鮮通信使 その知られざる歴史』
  2007年/48分
  制作:NHK、IAW
  ディレクター:太田慎一
江戸時代1607年から1811年まで12回にわたり江戸まで海陸3000kmに及ぶ道のりをやって来た朝鮮からの使節団「朝鮮通信使」。
通信使とは「信(よしみ)を通じる使い」の意味だが、朝鮮通信使は単なる友好使節団ではなかった。その本当の目的とは、豊臣秀吉によって朝鮮半島から連れて来られた人々の「奪還」であった…。
日韓、日朝関係の知られざる歴史の原点が明かされる。

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『王墓を掘る男』
  1975年/30分
  制作:九州朝日放送
戦後、糸島の考古学界をリードしてきた考古学者、原田大六。
「けんか大六」の異名をもつほどその古代史にかけた激しい情熱は各界の注目を浴び続けた。大学や行政などの権威に反発しつづけ、独学で考古学を学び、確立したその研究方法は「原田学」とも評される独特のもので「古代学」の草分け的存在でもある。
伊都国遺跡の発掘と保存に生涯をかけた情熱の考古学者・原田大六の破天荒な生き様。

ゲストトーク:関係者
プログラムG

作品上映
 15:10〜17:20

ゲストトーク
 17:20〜18:20

『夢と憂鬱 吉野馨治と岩波映画』
  2011年/112分
  脚本・演出:桂 俊太郎
  制作:村山英世、
     記録映画「夢と憂鬱」製作委員会(東京大学大学院情報学環 記録映画アーカイブ・プロジェクト、記録映画保存センター)
今はない岩波映画製作所は、日本を代表する記録映画制作会社であった。ここから羽仁進、羽田澄子、時枝俊江、土本典昭、黒木和雄、東陽一といった錚々たる映画作家を数多く輩出しその後の日本の映像界に大きな影響を与えた。
この映画は、その「岩波映画学校」の校長とも称された、吉野馨治(よしの・けいじ)の生き様を辿る。彼が記録映画にかけた夢を、教え子たちである羽仁進、羽田澄子、時枝俊江、小村静夫、藤瀬季彦、牧衷、吉原順平らの証言により解き明かす。
ふだん語られることが少ない記録映画プロデューサーの仕事、役割を明らかにすると共に、岩波映画の創立期を証言記録し、戦後の日本社会を記録する映画。
「ゆふいん文化・記録映画祭」が長年にわたって上映して来た映画、そしてこれまで当映画祭にゲストとして来てくださった方々が数多く登場する、「ゆふいん文化・記録映画祭ファン」には必見の映画。

ゲストトーク:桂 俊太郎 監督
プログラムH

作品上映
19:00〜20:10


<2本だて上映>

『伊勢型紙』
  1977年/30分
  監督:村山英治/解説:伊藤惣一
  製作:桜映画社/企画:文化庁
江戸小紋など江戸時代に大いに発達した模様の染めは、多くは型紙によったが、そのすぐれた造形美を生み出したのは、知られざる職人たちであった。
この映画は、そうした歴史を背景に、研ぎすまされた極微の作業である型紙彫刻の技法を詳しく記録し、手仕事というもののすばらしさ、かけがえのなさを訴えかける。
型紙職人達の気が遠くなる様な緻密で繊細な手作業は、感嘆と驚愕を呼ぶ。
伝統工芸の記録では他の追随を許さない桜映画社の頂点とも言える名作記録映画。。

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『越後のしな布』
  1986年/34分
  監督:松川八州雄
  企画:国立歴史民俗博物館
  制作:英映画社
しな布は、シナノキの皮からとった繊維を原料として、かつて北陸や東北地方の 山間部で広く織られており、日常生活には欠かすことのできないものだった。新潟県岩船郡山北町「雷」地区では,この希少な「しな布」紡織習俗が往時の姿をわずかに残している。
しな布に関する技術の工程を中心としつつ、さらに製品の利用例や日常生活との関わりを描くことで、しな布紡織習俗の全体像を把握しようとした貴重な記録映像。
当映画祭おなじみの松川八洲雄作品。

ゲスト予定者

 ・ 池内 了さん(宇宙物理学者)
 ・ 森 まゆみさん(作家)
 ・ 藤原 新也さん(写真家・作家)
 ・ 姜 信子さん(作家)
 ・広田 奈津子さん(「Canta! Timor」監督)
 ・益永 スミコさん(「死んどるヒマはない」出演)
 ・荒木重人さん(原田大六記念館事務局長)
 ・まつかわ ゆま さん(シネマアナリスト)
 ・野村 正昭さん(映画評論家)
 ・山内 隆治さん(記録映画保存センター) ほか。


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